故郷で母との時間


                         


今回は、もうかなり状況の厳しい母の側で 過ごす時間がゆっくりもてた。  何度も危機を乗り越え 誰もが母の生命力と気力に驚嘆しつつ エールを送って下さって有難い。 入院生活が長いこともあって 周りの方々に本当に温かい介護をしてただき、感謝している。 食べ物はもう受け付けない段階で たまぁ〜にいただくジュースも 肺炎の原因になってしまい 母も心得て欲しがらなくなった。 文句も言わず 首から下は殆ど正常機能をしていないのに 頭はしっかりしていて ぽつりぽつりと 思い出話をする。 


とりわけ母の一番のお楽しみは 童謡を歌う事。 昔コーラスをしていた頃を思い出している。 CDやラジオは嫌、生の肉声で 歌って歌って、もう一度お願いしますと 頼む母。 その中でも特に好きな歌は 「浜辺の歌」「ふるさと」「椰子の実」など、私が歌うと 母の唇が動き共に歌う。 苦しそうな呼吸も ひと時落ち着き 本当に癒しの時間。 


ここ何年か母と歌いつつ 日本語の美しい言葉に感動し、我々が共感できる感性が喚起させられ 遠き良き日のことを思い出す。 赤とんぼの歌を聞けば 同じような夕方の光景が胸の中にぱぁ〜っと広がる。 日本の風土、当時の生活感が 童謡の中には凝縮されている。 原田泰治の描いた挿絵をみながら 共に歌える日が一日でも長いことを願う。   


大阪からは 決まってとん蝶という 大豆、塩昆布、梅干いりのおにぎりより かなり大きいうっすら塩味のごはんをもって帰る。 これは、父が存命の頃、 新大阪駅でお弁当代わりに買い 電車の中で食べておいしいというので お土産に頼んだことがある。  すると、家族全員のお気に入りになり 帰阪のたびに買ってくることになった。  


今は バージョンアップして 唐辛子入り、黒豆入りなどバリエーションが 楽しめる。  残念なのは 大豆を炊き込んでいるので 傷みが早く 即座に差し上げられる範囲でしか お土産にならないので もっぱら我が家で楽しむだけである。  Kちゃん、Mちゃん 懐かしいでしょう?  アメリカでは食べられないよね。  早く帰っておいで。