美味しそうな香が秋の風にのって漂ってきます。 お料理の香に限らず、その香に誘われて 日常忘れていた懐かしい思い出が喚起され 色々な当時の様子がぱぁ〜っと瞼に、心に映る体験はありませんか？
何ともいえない独特のスパイスの香、４０年余り前に住んでいた香港の生活、ある意味では今までの人生で最も贅沢な ある意味では最も不自由な生活を一瞬にして思い出してしまいました。 泣きたくなる様な懐かしい香でした。
当時の香港、勿論中国返還ずっと前。時は文化大革命の頃。父の仕事の都合ですが 弟は大学受験をひかえ、妹はまだ学生だったので 母が同伴できず 大学卒業して間もない私が父に同伴しました。
住居は山の上。公共交通手段は当てにならない１時間に一本のバスかタクシ―。香港大学への聴講とピアノのレッスンのときは 父についてくれていた運転手さんを回してくれるのですが その他は許可されているにも拘らず 一切プライベート使用を父は許してくれませんでした。
治安も悪く、あちこちで暴動もあり、水の供給も中国側からカットされ ４日に一度の給水です。 森鴎外の鶏の作品ではありませんが バケツ一杯の水が非常に大切。 アマさんと呼ばれる住み込みで家事全てをしてくれる日本語を話す人がいて その人の水を大切にする使い方は目を見張るものがありました。
ある時、友人とお茶を飲んでいて 急に外出禁止令が発令され、タクシーをなかなかつかまえることが出来ないばかりか 爆弾騒ぎもあり やっとの事で家に着いたときは 日頃何事にも動じない父が心配の余り あちこち電話をかけていました。 大切な会食の最中に夜間外出禁止令が発令され ２４皿のお料理が全て一気に出てきたこともありました。こんな状況下でも 日本ではお会いできないような著名な方達にお会いできたり 日本では高級品が ここでは容易く手に入り 楽しめたショッピングの思い出もあります。
スパイスの香にのせての思い出、お料理も筆舌しがたい美味しさ。 庭のきゅうり、ハイナンチキンライスに添えましょう。まだ余韻に浸っています。有難うございました。
