音楽評論家吉田秀和氏

*そこに自分の考えはあるか?*
毎日炎暑ですね。皆様には お変わりございませんか?

数日前、クローズアップ現代で 5月に 98歳で亡くなられた吉田秀和氏の遺言と呈して 鋭い洞察、珠玉の言葉の数々が 紹介されていました。

吉田氏と云えば 私の記憶にもはっきり残っていますが 当時、神様とまであがめられ 絶賛されていたピアニスト、ホロヴィッツの演奏を 忌憚ない言葉で表した事でも知られています。

「今、私たちの目の前にいるのは骨とうとしてのホロヴィッツにほかならない。この芸術は、かつては無類の名品だったろうが、今は最も控えめにいってもひびがが入っている。それに一つや二つのひびではない。忌憚(きたん)なくいえば、この珍品には欠落があって、完全な形を残していない。」

また アルゲリッチを表して「石のような金属のような響きから絹のような音までピアノから奏し出せる人。彼女がピアノを弾くときピアノは管弦楽に少しも劣らないほどさまざまの音の花咲く庭になる。」

また、従来のバッハの解釈とは違い、独自の感性で演奏し、世に受け入れられなかったグレングールドに一目を置き
「私には、グールドという人が、私たち常人に比べて、はるかに微視的な感受性をもっていて、異常に鋭敏で迅速な感覚を持っているのではないか、という気がしてならない。これだけの演奏をきいて、冷淡でいられるというのは、私にいわせれば、とうてい考えられないことである。私は日本のレコード批評の大勢がどうであるかとは別に、このことに関しては、自分ひとりでも、正しいと考えることを遠慮なく発表しようと決心した。」

話題になった グレングールド演奏のゴールドベルグ変奏曲、古いCDをだしてきて また聴いております。そして過日の茂木氏の推奨されるシューベルトのCDも。

ベルリンフィルカラヤン指揮、曲はベートーベンの田園の演奏のことでしょうか?
「それは、いわばアウトバーンを快速で走る自動車の中に座ったままドイツの森の杉やひのきや、にれといった木立とその傍らの名もないような野草やかん木まで見逃さない優れたカメラのような目を感じさす。しかも、その各個の映像の明らかなこと。それは、ごつごつした輪郭を少しも持っていないにもかかわらず一つ一つが、はっきり分かる。」

音楽を こんなに的確に視界に訴え 心に響く言葉で表現できる文章力のセンスにも感動します。 

流行に左右されず しっかりと自分の考えを持つことが大切と述べ 視野を広くして イマジネーションを育てることの大切さも述べてこられました。

想定外の大惨事と言われている東日本大震災、吉田氏は 非常に衝撃を受けられたということです。イマジネーションが育っていれば、対処法もまた考えられたはず。矢張り、日本は変わっていなかったんだと、これからの日本を案じながら旅立たれたとのことです。

司馬遼太郎氏、吉田秀和氏など 本当に日本文化を大切に思い 提言し続けて来られた人達が亡くなられましたね。沢山の著書を残されていますから また順次読みたいと思います。