
- 作者: 下村徹
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2008/11
- メディア: 単行本
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著者の下村徹氏は 次郎物語を書かれた下村湖人のご子息にあたられる。表紙帯に「20世紀前半、故国ハンガリーの悲劇に巻き込まれていく孤高の天才彫刻家、ワグナー・ナンドール。2度の敗戦、冷戦、動乱、政治犯として指名手配、希望の欠片すら見いだせない過酷なまでの運命。
それでも作品を刻み続けた彼の胸に深く静かに流れていたのは 日本の武士道精神と、妻千代の温かさだった・・。東欧の悲しく激しい時代を生き抜いた男の愛と信念を描く感動のノンフィクション」
さらっと書かれているものの、私達、単一民族には到底想像も出来ないような民族の対立、波乱万丈で過酷な日々、そんな中で常に不屈の精神と不思議な導きや縁によって 生き抜いて行く。 決して妥協しない強い信念の中にも 常に困窮している人々に温かい手を差し伸べ 処々新渡戸稲造の武士道精神に照らし合わせている。
新渡戸稲造の武士道は英語で最初に出版されたものだが その言葉はかなり読みづらい。 アメリカで読書会で取上げられたが アメリカ人も同意見。 その内容を理解し、信条とするのは よほど訴える何かがあったのだろう。
マジャール人と日本人とは共通している所があると ハンガリーからアメリカに移住してきた友人がよく語っていた。名前も姓を先にかくそうだし 言葉の語順も日本語と似ていると 片言の日本語をよく話していた。
ハンガリーの希望、哲学の庭と名づけられた八体の彫刻、ハンガリーとルーマニアの和解と親睦の象徴として建立された彫刻は 全て日本人彫刻家ワーグナ・ナンドールの作品。 そのどの式典も日本で報道される事はなかったそうだ。
世界の平和を願い、ひたすら自分のメッセージをその彫刻に刻み込んだ作品は ワグナー亡き後、次第に人々の心に届きつつある。 栃木県にあるワグナー美術館、是非行って見たい。