クレールの刺繍

映画と言ってもDVDで。 これは何人かの友人に勧めてもらっていながら 映画を見る機会を逸してしまった作品。  昨日の若い来客、偶然この映画の話がでて 残念ながら見逃したというと 夜、DVDを わざわざ届けてくれたのです。  


あらすじについては省きますが 望まぬ妊娠を 親友以外には親にも告げることが出来ず 不安一杯の17歳の少女と 突然の事故で最愛の息子を亡くし
人生に絶望的な 厳しい中年のアトリエの女主人。  この2人の寡黙な女性達が 刺繍を通じて一針、一針紡いでいく情感。  


閉ざした心を互いに 女性ならではの本能的な感覚で無言のうちに汲み取り やがては互いの再生につながっていく。  ストーリーもさることながら 映像の美しさ 質感、触感が感じられる。  例えば刺繍はフランス刺繍のようなものを連想していたが 毛皮や金属、スパンコールなどで輝きや陰影をあたえ 非常にモダンだけど息を呑むような古典的な繊細さとのコントラスト。


刺繍を裏側からみると 糸が交錯していて 表面のすっきりしたパタンとは異質なもの。  私には それが何となく人生の表面的なものと 人々が抱える奥深い心のひだのように思えた。

視覚と情感に訴えるしっとりとした作品。  何でもかんでも言葉で表わすのではなく 日本の間の取り方に通じるような含蓄のある作品で 一人でゆったりとした午後を豊かに過ごせた。  私もまた、この作品を見て フェルメールの真珠の耳飾をつけた少女を 即座に連想した。  少し緑がかったブルーのファッションが 白い肌と豊かな赤毛とのコントラストで印象的。  思いがけずこんな形で見たかった映画を楽しめてラッキーでした。  感謝!