広島に生まれ 14年前に完全に聴力を失い、轟音のような耳鳴り、頭痛と闘い、15種類もの薬を飲みながら 混沌とした中から見え隠れする音を拾いつつ 絶対音感だけで ベートーベンの第九よりも長い交響曲を作曲された偉業!ただただ驚嘆せずにいられません。
感情の起伏、交錯、うつろいをぶつけた交響曲は まさに「魂の旋律」です。私は,コンサート会場で 交響曲を聴くことは好きですが 家では 余り好みません。でも、番組終了後、全曲聴いてみたくなり すぐにオーダーして 聴いております。
心がザワザワ落ち着かないとき この曲、特に、三楽章終盤は 宇宙の大きな力に抱かれているような優しさに 何度も繰り返し聴きたくなります。まさに希望のハーモニーです。
放映中、不穏な感情表現には 伝統的に「音楽の悪魔」と呼ばれ,避ける傾向にあった三全音(トリトヌス)が 効果的に使われていること また闇の中の一筋の光から 希望を膨らませ 再生を示唆する音調には 音程が十字架の形をとっているなどの説明があり 感動的な開眼でした。下降する音を対比させながらの 上昇音は 深い苦難をかかえつつも 一抹の光を見いだした喜びが 勇気へと導かれていくエンディングになっていると思います。
コロンビアのサイト,この曲について「中世期以来の西洋音楽の歴史を包含し、ブルックナー、マーラー、ショスタコヴィッチなど ロマン派シンフォニーの系譜を受け継ぐ 長大なシンフォニーです」と 紹介されていました。現代のベートーベンと言われ アメリカのタイム誌でも紹介されたとのことです。
震災で母親を亡くした少女のために リクイエムを作曲する苦難の過程も紹介され そのピアノ曲も 心の琴線にふれる 素晴らしい鎮魂歌です。
再放送が予定されています。4月13日(土曜日)NHK午後3時5分〜54分。