台所のおと

この時期の台風にはびっくり!猛ダッシュで上陸し、なおも横断中の台風4号、皆様におかれましては 大丈夫だったでしょうか?被害が最小限でくいとめられますように。小田原でも避難勧告が出ている地域もあり 心配です。

本日は、画像整理も出来ていないので 少し前に読んだ本について 書きます。
幸せなことに 文庫本、余り小さな文字でなく 明るさが十分であれば まだ眼鏡なしで読める。先日帰阪のおり、新幹線で読んだ本。幸田文さんの名文、以前から感心していたが この短いストーリを読んで 新たに感動。

もう一冊は 知人おすすめの 今野敏氏の作品、マッスル君も別のタイトルを読了。この2冊の本、ほぼ同時に読了したが ノスタルジアを感じさせる一昔前の生活、そして、2003年作と少し古い感じもするが 新しい感覚の内容。異質な2冊、時の変遷を感じさせられた。

しっとりとした感覚的なものに心理的描写を投影の前者、実証、科学的な分析、そして言葉、表情分析の後者。どちらも限られた空間での描写、そこから派生させ 掘り下げ 多面的な分析力、読者を退屈させない。

台所のおと、小さいながら手を抜かず 丁寧なお料理で人気を集めている料理屋を営む夫婦。夫佐吉は体調を崩し 台所と障子を隔てた部屋で療養中。妻あきの働く台所から聞こえる音から その光景がみえてしまうほど。水道の音、水のたまる音で それが青菜、しかもほうれん草2束だなとまで・・・

ある日、しっとりと静かな 妻あきのたてる音に変化を感じる佐吉。佐吉が治りがたい病だと 医者から告げられたあきの動揺、自ずと音に現れ、それを訝る佐吉。音を介しての夫婦の対話、思いやり。小津安二郎の映画を何故か連想してしまいました。

揚げ物の音を雨の音を聞き違えるようになった佐吉、病状の悪化、限られた時間をほのめかしながらも 読後、暗い印象を持たず 温かいエンディング。活き活きとした立体的な文章力です。

文章力を磨くなら 幸田文寺田寅彦の作品を読むと良いよといわれたことがあったっけ。英語では チャールズディケンズの作品、ニューヨーカーやハーバードビジネスレビューが良いよと言われたこともあり、一時は頑張ったけれど、それも古の事! 

本日、らっきょを漬けました。どんな音がしたのかしらん?