本日は、画像整理も出来ていないので 少し前に読んだ本について 書きます。
幸せなことに 文庫本、余り小さな文字でなく 明るさが十分であれば まだ眼鏡なしで読める。先日帰阪のおり、新幹線で読んだ本。幸田文さんの名文、以前から感心していたが この短いストーリを読んで 新たに感動。
もう一冊は 知人おすすめの 今野敏氏の作品、マッスル君も別のタイトルを読了。この2冊の本、ほぼ同時に読了したが ノスタルジアを感じさせる一昔前の生活、そして、2003年作と少し古い感じもするが 新しい感覚の内容。異質な2冊、時の変遷を感じさせられた。
しっとりとした感覚的なものに心理的描写を投影の前者、実証、科学的な分析、そして言葉、表情分析の後者。どちらも限られた空間での描写、そこから派生させ 掘り下げ 多面的な分析力、読者を退屈させない。
台所のおと、小さいながら手を抜かず 丁寧なお料理で人気を集めている料理屋を営む夫婦。夫佐吉は体調を崩し 台所と障子を隔てた部屋で療養中。妻あきの働く台所から聞こえる音から その光景がみえてしまうほど。水道の音、水のたまる音で それが青菜、しかもほうれん草2束だなとまで・・・
ある日、しっとりと静かな 妻あきのたてる音に変化を感じる佐吉。佐吉が治りがたい病だと 医者から告げられたあきの動揺、自ずと音に現れ、それを訝る佐吉。音を介しての夫婦の対話、思いやり。小津安二郎の映画を何故か連想してしまいました。
揚げ物の音を雨の音を聞き違えるようになった佐吉、病状の悪化、限られた時間をほのめかしながらも 読後、暗い印象を持たず 温かいエンディング。活き活きとした立体的な文章力です。
文章力を磨くなら 幸田文、寺田寅彦の作品を読むと良いよといわれたことがあったっけ。英語では チャールズディケンズの作品、ニューヨーカーやハーバードビジネスレビューが良いよと言われたこともあり、一時は頑張ったけれど、それも古の事!