二つの日本美術館

過日、友人宅の近くに移設された山種美術館に 友人たちと行ってきました。以前は 九段にあり、余り目立たず いつもゆっくり鑑賞でき ふらっと立ち寄ってみたくなる 癒しのスポットでした。上京して 疲れたなと思うと 時々腰をかけながら 美術館で 絵画鑑賞しつつ贅沢な休息をすることがあります。

広尾に移設された新しい山種美術館、日本文化に貢献する美術館という理念らしく 格調高く 広々とした空間でありながら 温かい感じがしました。東山魁夷と昭和の日本画の展示、都会の真ん中に すっぽりと世俗感のない東山魁夷の静かな奥深い自然の美しさが別世界を醸し出していました。音がないのに 冬景色をみれば しんしんと降る雪の音色が聞こえてきそう、紅葉をみれば 山の彩りが目に鮮やかに 桜をみれば華やぎの世界が そして夏の緑の潤い、静謐な丁寧な筆致が 私達、日本人の郷愁に語りかけてくれているようです。

川端康成が「京都を描いておかないと 京都はなくなりますよ」と言われたそうで 東山魁夷の描いた京都の四季作品4点が展示された部屋がありました。季節の移ろいが顕著だった子供の頃が懐かしく思い出されました。

父も東山魁夷がお気に入りでした。 父の持っていた四季のめぐりあい4冊セット他美術書が 私の手元にあります。限定〜枚と刷られた「緑潤う」は 妹宅に。
四季のめぐりあい・夏より

後日、日本の文化に呼び寄せられ 一人で太田記念美術館「江戸の彩ー珠玉の浮世絵コレクション」に 行ってきました。こちらは東山魁夷の世界とは対照的に 世俗的な庶民の躍動感あふれる浮世絵。その当時の庶民の生活様式やファッションなど 結構自由闊達。 それに女性が生き生きしていて 活気が伺えます。 

輸出用陶器の包装紙としても使われたと言う浮世絵が 海外の人たちの目にとまり ジャポニズムが広がっていったそうです。世界から閉ざしてその中で育った独自の日本文化は きっととてつもなく興味深い異質のものだったのでしょうね。