その6(トルネード)

アトランタ滞在最終日は ゆっくり娘と過ごすことに決めていた。  犬が大好きな娘は 友人が多忙なとき 犬が可哀想だからと連れてきて面倒を見ている。  どちらの犬も飼い主がなく もう少しで殺される所を 友人が所定の手続きをとって 飼うようになったとのこと。  感謝をしているのか 非常に穏和でかわいい。
近くの公園に散歩に連れて行く。  つながなくても安全な広々とした公園。  他にも散歩させに来る人達がちらほら。  気軽に声を掛け合い 犬も仲良く遊ぶ。  こんなのどかな日に 思いも掛けないことが起こり一睡も出来ない夜を迎えるとは 想像も出来なかった。  


翌朝は ニューヨークに向けて出発することになっていて 飛行機が朝早いので空港近くのホテルを予約してもらっていた。  眠るだけなのでラッシュを過ぎてからゆっくりホテルに入ればよいと 夕食もすませそろそろ出かけようとする頃 雷を伴う突然の嵐。  雷の大合奏が少しおさまり 車にのったとたん 飛行場方面に向かうことを知っていた娘の友人から電話があり 街がトルネードにおそわれ 自分もその中にいるとのこと。  道は閉鎖されているかも知れないし、看板などもとびちり、車も横転しているから 良く情報を聞いてから出かけた方が良いと知らせてくれた。  もう少しで我々もこのトルネードの真っ直中に・・・

ニュースや予報を見れば未だ警報がでていて 更に大きなトルネードの可能性も・・・おさまれば出かけようと話しつつも 次々写るテレビの映像に 今夜の移動は難しいと判断し フライト自体もどうなるかわからないと娘が確認してくれたら on timeとのこと。  ホテルもキャンセル。


娘の友人はケガは免れたが 車のガラスがばりばりにわれ 近くの建物の地下に皆避難したそうだ。  エスティンホテルの窓ガラスも被害が多く 風で白いカーテンが 闇夜に不気味にはためいている映像や アリーナの屋根もふっとんだり CNNセンターも被害を受けた。  史上始まって以来の 大都会の中心部をヒットしたトルネード。  温暖化の影響での異変だろうか?  

結局、眠れぬまま 朝、4時に準備を整えて 飛行場に被害を受けていない道を選び遠回りして出かけることにしたのだが 娘が帰り大丈夫だろうか?と不安が募る。  タクシーがあればタクシーでとさがすのだが そんな朝早い時間には見つからない。  無事、飛行場についたものの 治まっていた雷雨が またひときわ激しくなり 娘が無事家にたどり着いたとわかるまでは落ち着かず。  機内に入る寸前電話で家に到着したことを確認できたときは ノドがからからになっていた。  


娘はインターネットで私の飛行機が飛び立ったことを確認し マッスル君やNYで出迎えてくれる息子に連絡を入れてくれたようで 最後の最後までお騒がせいたしました。 てきぱきと判断を下し対処してくれる娘とはすっかり親子の立場が逆転し 何故かこんな時に母を思い出してしまいました。  「向かえに来るから飛行機が飛ばなかったらすぐ電話してよ」と 渡してくれたコインが沢山入った袋、 思い出にとっておきますね。 フル回転で楽しめたアトランタ滞在、一週間足らずだったけど お陰様で何週間もいたような充実気分。  ハプニングはこれから先の旅路でも続きます。