"Human Moment"

スケジュールの調整が難しい妹、 漸く一日だけ都合がつき 亡き母の家で 一緒に最終段階の整理の目処がつきました。  押入れの奥のほうにあった 開かずの箱、 二人で点検です。


これは父がオーストラリアに赴任していた時、 会社からそのまま帰国の際送ったと思われる箱。  開かずの箱です。  その中には 思いがけずも 父が単身赴任していた一年間に 私達が日本から出した手紙が きちんとそのまま保管されていました。  もうかれこれ半世紀近く前のものです。  嬉しさ,懐かしさ悲喜こもごもで 妹と泣いたり笑ったりして 片付けはそっちのけで 読み返しました。


オーストラリアという国についての知識も余りなく 先ず父が一年間過ごして 教育事情など様子をみてから 私達家族を呼び寄せたという時代でした。 手紙を読み返すと ちゃぶ台に 母と私達姉妹が集まって 遠くの国に思いをはせながら 父を懐かしみ手紙を書いていたことを思い出します。  


当時の様子がありありと私達の言葉で書かれていて 又、異国にいる父のどれほど励ましになっただろうかと思うような ほのぼのとした良い手紙もありました。  今でこそ Eメール電話など 容易く連絡を取れますが 当時は 航空便でさえ珍しいものでした。


各々の個性溢れるイラスト入りの手紙 父はきっと私達を一人一人 ビビッドに思い出してくれたかと思います。  スローな時代の 良き“Human Moment”だった気がします。

蒸し暑い日のさっぱりサラダ、イカと春雨、玉葱そして香菜