初夏のルビー

           

       
「これ食べたら すご〜く 元気が出たの。  今日食べなきゃ駄目だよ! 元気出るよ〜」 っと 腕一杯のゆりの花と 届けていただいた 鮮紅色の  大粒なれど 清楚で可憐な さくらん。  正式名は さくらん? さくらご? 桜桃?  何でもいいや〜!


「食べて、食べて〜」 じっと口元を見つめられる。  おもむろに 細い枝をつまみ パクッ! Oさんの 母性本能たっぷりの細い目が まるで子供がどう反応するかのように 優しい。  甘さと酸味が奏でるハーモニー 果肉の食感 そして細胞に染み渡るような瑞々しさ!  こんなに 丁度に熟したさくらんぼは 初めて。  めったに手に入らないもののようだ。 お皿に入れると つやつやしていて ルビーのよう。  さくらんぼを 珊瑚の首飾りと書いたのは 太宰治 だったかな?  珊瑚より輝きがあるんだよ、これは!


茎右往 左往菓子器の さくらんぼ   (高浜虚子) にあるように お皿の中で 茎が踊っている。  ほんの短い期間の贅沢な果実。  この果実も 命を紡いでいくために 知恵を働かしているようだ。  いわゆる劣性遺伝を残さないため 自家受粉をしないと 聞いたことがある。(人間の世界では 近親結婚を避けるということかな) 異品種の受粉をするために 自家受粉に対しては 防御反応があるらしい。  それでも異品種が近くに ないときには ぎりぎりまで待って 自家受粉してまで 種の保存をするという。  


こんな 可愛い赤い珠にも たくましさが宿っている。  そのたくましさに加えて 赤は元気のでる色。 何よりも 友達の温かい気持ち。  元気に ならないわけがありません!  ありがとう!